
チャイムやベルの音で、ふっと目が覚める。
そんな夢を見たことはないでしょうか。
夢の中では、ときどき「音」が合図として使われます。
それは、何か大切なことに気づく必要があったり、忘れていた事実を思い出すために、
心が“目覚まし”を鳴らすような形です。
たとえば、
実際にはアラームが鳴っていないのに、夢の中の時計のベルで起きてしまった。
チャイムが鳴って、場面が切り替わった瞬間に目が覚めた。
誰もいないはずなのに、ノックの音が聞こえた気がして目が覚めた。
こうした経験がある人もいるかもしれません。
現実でも、苦手な授業で先生に当てられそうになり、ちょうどチャイムが鳴って「助かった……」と胸をなで下ろしたことはないでしょうか。
夢の中のチャイムやベルも、それに似た働きをすることがあります。
夢では、ときに、自分の生命に関わるような体験をすることがあります。
追いかけられる。
落ちそうになる。
閉じ込められる。
何か恐ろしいものに襲われそうになる。
けれど、その衝撃が強すぎると、心はそれをそのまま受け入れきれません。
危うい状況にさらされた“ぎりぎり”の瞬間、チャイムやベルの音が鳴り、はっと目が覚めることがあります。
それは、夢の中の出来事から逃げるためというより、心がそれ以上深く傷つかないように、現実へ引き戻しているのかもしれません。
実は、チャイムやベルが鳴らなくても、「これは夢だ」と自覚できれば、悪夢の恐怖は薄れることがあります。
夢だと分かった途端、怖さが消えることがあるのは、そのためです。
ではもし、夢だと気づけないまま、助けも来ないまま、ストーリーが進んでいったらどうでしょう。
心はそこで、別の方法を使うことがあります。
それが、場面転換です。
夢の筋書きそのものは続いていても、シーンだけを切り替えたり、急に違う場所へ移動したりして、恐怖がそれ以上深まらないように力を抜いてしまう。
夢は、そんな巧妙なこともやってのけます。
もし、チャイムが鳴って「ほっとした」のであれば、あなたの夢の構想力がとても強く、その結末を“受け入れるのが辛いほど”リアルに感じていたのかもしれません。
一方で、チャイムやアラームの音は、恐怖から逃れるためだけに鳴るとは限りません。
夢の中で、何かを読もうとした瞬間。
誰かに話しかけられた瞬間。
扉を開けようとした瞬間。
手紙の中身を確かめようとした瞬間。
大切なことに触れる直前で音が鳴り、目が覚めることがあります。
気がつくと、
私はどこまでも上に続いている、古い木製の螺旋階段の途中に立っていました。
周りは薄暗い洋館のような雰囲気で、窓の外は真っ白な霧に包まれており、どこにも出口が見当たりません。
「とにかく上へ登らなければ」と焦りながら一段ずつ足を動かすのですが、どれだけ進んでも景色が変わらず、足が棒のようになって疲弊していく夢でした。
途中の踊り場に差し掛かったとき、すれ違った見知らぬ老紳士から、一通の白い手紙を黙って手渡されました。
手紙を開こうとした瞬間に強いアラーム音が響き渡り、中身を読めないまま目が覚めました。 夢の中の私は、出口のない焦燥感と、手紙の内容が気になって仕方がないという、奇妙なモヤモヤ感を抱いていました。
このような夢では、アラーム音そのものが、
「ここで終わり」
「これ以上は、まだ見せられない」
「この問いを持ち帰りなさい」
という合図になっている可能性があります。
夢は、答えをそのまま教えてくれるとは限らず、時々
いちばん気になるところで終わることがあります。
目覚めたあともその意味を考えさせようとします。
読めなかった手紙。
開けられなかった扉。
聞き取れなかった言葉。
たどり着けなかった場所。
そうした「未完了」の場面は、
心がこちらに残した問いであることもあります。
アラーム音で目覚めたあと、モヤモヤが残るなら、それは
眠りを邪魔されたからではなく、心の奥で何かがまだ続いているからなのかもしれません。
その音は、夢を終わらせる音であると同時に、目覚めたあとに考え始めるための音でもあるのです。
私自身、以前はチャイムの音で目覚めることがありましたが、ある時はノックの音で目覚めたことがありました。
家には私以外、誰もいませんでした。
こんなふうに、半分夢、半分覚醒のような状態では、短い音や気配が妙にリアルに感じられることがあります。
実際の音が夢に入り込んだのか。
夢の中の音が、現実の音のように感じられたのか。
あるいは、目覚める直前の心が、音という形で自分を起こしたのか。
はっきり区別できないこともあります。
けれど、夢の中のチャイムやアラームは、多くの場合、ただの音ではありません。
それは、
危険から離れるための音。
場面を切り替えるための音。
大切な問いを持ち帰るための音。
心が自分に気づかせようとする音。
なのかもしれません。
夢の中で鳴った音が、目覚めたあとも妙に心に残るなら、その音が何を知らせようとしていたのか、少しだけ考えてみるとよいでしょう。
そこには、まだ言葉になっていない自分の本音や、見落としていた心のサインが隠れているかもしれません。



コメント